Q. 保険金や死亡退職金等を受け取ったら申告する必要がある?
 


A.
1 相続財産の意義
 相続の開始があった場合には、相続人は、被相続人の一身専属的なものを除いて、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法第896条6)。
 したがって、被相続人に属する所有権、制限物権、占有権、債権を相続人が承継する。
 また、財産権であれば、著作権、特許権、実用新案権、商標権のような人格的色彩を帯びたものであっても、相続人に承継される。

2 本来の相続財産
 本来の相続財産とは一般には被相続人に帰属していた財産上の権利義務を相続又は遺贈を原因として、相続人又は受遺者が取得する財産をいうが、相続税法では、被相続人に帰属していた財産のうち、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべてをいうこととし、積極的財産のみを「本来の相続財産」として課税の対象としている(相続税法第2条)。

(本来の相続財産の具体例)
 土地、家屋、借地権、株式、預貯金、現金、貴金属、宝石、書画、骨とう、自動車、電話加入権、立木、金銭債権など。

【参考法令・通達番号】相続税法基本通達11の2−1

3 みなし相続財産
みなし相続財産とは法律的には被相続人から相続又は遺贈により取得したものではないが、実質的に、相続又は遺贈により取得した財産と同様の経済的効果を持つものがある。
 相続税法では課税の公平を図る見地から、このような財産を相続又は遺贈により取得したものとみなして、相続税の課税対象としている。これを「みなし相続財産」と呼んでいる。

(みなし相続財産の具体例)
@ 生命保険金など(相続税法第3条1項一号)
A 退職手当金など(相続税法第3条1項二号)
B 生命保険契約に関する権利(相続税法第3条1項三号)
C 定期金に関する権利(相続税法第3条1項四号)
D 保証期間付定期金に関する権利(相続税法第3条1項五号)
E 契約に基づかない定期金に関する権利(相続税法第3条1項六号)
F その他の利益の享受(相続税法第4条、同7条、同8条、同9条など)
G 農地等の贈与者が死亡した場合の農地等(租税特別措置法70条の5)

@ 生命保険金など
イ みなす理由
 被相続人の死亡により相続人等が受け取る保険金は、被相続人に帰属した後に相続人等が取得するのではなく、保険契約に基づいて被相続人の死亡という事実の発生によって、相続人等が受け取るべきものであり、法律的には、相続による取得財産とはならない。
 しかし、実質的には、被相続人が保険料を負担し、その死亡により相続人等が取得するものであるから本来の相続財産と何ら異ならないので、相続税法は生命保険金などを「みなし相続財産」として、相続税を課税することにしている(相続税法第3条1項一号)。

ロ 相続財産とみなされる金額の計算
 相続財産とみなされる保険金の金額は、被相続人がその保険料の全部を負担していれば、取得した保険金の全額であるが、被相続人が保険料の一部を負担していた場合には、次の算式により計算した金額となる。

(算式)
取得した
保険金額×被相続人が負担した保険料の金額/保険契約に基づき被相続人の死亡時までに払い込まれた保険料の総額

=相続財産とみなされる金額

ハ 保険金の課税関係(保険事故が発生している場合)
 保険金を受け取るのは、契約者の死亡だけに限らないし、また、保険料負担者と受取人が異なるなどいくつかのケースが生じてくる。
 保険金の契約内容等による課税関係は、次の表のとおりである。

【参考法令・通達番号】相続税法施行令1の2、相続税法基本通達3−73−83−93−103−113−123−133−143−163−173−283−383−48

A 退職手当金など
イ 相続財産とみなされる退職手当金等
 被相続人の死亡により被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(弔慰金、花輪代、葬儀料などで実質的に退職手当金の性質を有するものが含まれる)で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものを相続人又は相続人以外の者が取得した場合は、その退職手当金などは、相続又は遺贈により取得したものとみなされる(相続税法第3条1項二号)。また、支給されるものが、金銭であると、物又は権利であるとを問わない。

ロ みなす理由
 被相続人の死亡により被相続人に支給されるべきであった退職手当金などは、相続人又は相続人以外の者が支給者から直接に支給を受けるものであって、本来の相続財産を構成しない。
 しかし、被相続人に支給されるべきであった退職手当金などの実質は、被相続人が死亡したために相続人などに支給されたものであるから、本来の相続財産と異ならないので、相続税法は退職手当金などを「みなし相続財産」として、相続税を課税することとしている。

【参考法令・通達番号】
相続税施行令1の3、相続税法基本通達3−18、同3−19、同3−20、同3−21、同3−22、同3−24、同3−25、同3−30、同3−31、同3−32、同3−33

B生命保険契約に関する権利
 相続開始の時までに保険事故が発生していない生命保険契約で、@被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、A被相続人以外の者が契約者である場合には、相続開始によってその契約者は、その契約に関する権利のうち、被相続人が負担した保険料の額に対応する部分を、相続又は遺贈により取得したものとみなされる(相続税法第3条1項三号)。
 なお、被保険者でない保険契約者が死亡した場合で、保険料をその契約者が負担していたときは、その契約に関する権利は、相続人その他の人が相続や遺贈により取得する本来の相続財産となる。

【参考法令・通達番号】相続税法基本通達3−343−353−363−373−383−39

C定期金に関する権利
 定期金に関する権利は、相続開始の時までに定期金給付事由が発生していない郵便年金契約その他の定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で、@被相続人が掛金の全部又は一部を負担し、かつ、A被相続人以外の者が契約者である場合には、相続開始によってその契約者は、その契約に関する権利のうち、被相続人が負担した掛金の額に対応する部分を、相続又は遺贈により取得したものとみなされる(相続税法第3条1項四号)。
 なお、生命保険契約を除いているのは、Bで説明した生命保険契約に関する権利との重複適用を避けるためである。

 
(参考文献) 税務大学校講本 相続税(贈与税) 18頁