Q. 特別受益を持ち戻さなくても良い場合・寄与分を考慮しなくて良い場合 


A.
 民法は、民法第903条で「1 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定によって算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額を以てその者の相続分とする。」と特別受益の持ち戻しを規定している。

 一方、同第3項では、「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する。」としている。いわゆる持戻免除である。

 この生前贈与や遺贈に関する持戻免除の意思表示の方法に制限はなく、黙示の更新であってもよく、その時期についての制限もないと解するのが一般である。
 遺贈に関する持戻免除の意思表示だけは、遺言によらなければならないとする説もあるが、遺言に限定されずその他の方法でもよいとする説(安倍正三「特別受益の持戻し免除」 相続法の基礎 島津一郎,安倍正三,田中恒朗/編 青林書院新社 1977年)が有力である。

 生前贈与についての特別受益の持戻免除の意思表示があったものと認定した判例としては、
@福岡高等裁判所昭和45年7月31日決定・家庭裁判所月報22巻11−12号91頁
A東京高等裁判所昭和51年4月16日決定・東京高等裁判所民事判例時報27巻4号90頁
B鳥取家庭裁判所平成5年3月10日審判・家庭裁判所月報46巻10号70頁)がある。

 私は、生前贈与について、特別受益の持戻免除の意思表示をしておくのも、遺産についての後日の紛争を防ぐうえで有効あると考える。

 また、相続開始後に特別受益の持戻しの免除はできるかどうかについて、判例は、
共同相続人の一部に特別受益を得たものがあり、本来これを持戻しをしなければならない場合であっても、共同相続人全員で特別受益の存在を度外視し、相続開始時の遺産のみを分割の対象とする合意があれば、これに従っても何ら妨げないとする鹿児島家庭裁判所昭和56年8月21日審判・家庭裁判月報35巻1号99頁)。

 
したがって、遺産分割前に、特別受益の持戻し・寄与分の免除の合意書を締結しておくのも後日の紛争を防ぐうえで有効あると考える。

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