Q 特定の財産だけ限定して、遺留分減殺請求をできますか? 


A. はい、特定の財産だけ限定して、遺留分減殺請求をできます。

遺留分による減殺請求権は一種の形成権と解され(最高裁判所昭和35年7月19日判決・最高裁判所民事判例集14・9・1779、最高裁判所昭和41年7月14日判決・最高裁判所民事判例集20・6・1183、最高裁判所昭和44年1月28日判決・最高裁判所民事判例集30・7・768)、権利者の意思表示だけによって減殺の効果が発生する。したがって、遺留分による減殺請求をするしないは遺留分権利者の自由です。これが、相続の場合の当然(自動)承継の時と違います。
 また、遺留分減殺請求は、受遺者(遺言により財産を貰った人)が、価額弁償の意思を示さない限り、現物返還を原則とします。
 受遺者(遺言により財産を貰った人)は、個々の物件の所有権のうち、
遺留分を侵害した持分割合だけ現物返還しなければなりません。
 個々の物件の所有権は、当然ですが、個々の物件ごとに存在します。
したがって、特定の財産だけ限定して、遺留分減殺請求をできます。

(遺留分権利者に対する価額による弁償)
第1041条 
 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
 前項の規定は、前条第1項ただし書の場合について準用する。

【参考文献】
新法律学辞典 第三版 有斐閣
新版注釈民法(25)相続(3)補訂版 中川善之助・加藤永一編集 有斐閣 平成16年  

(民法・判例)

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(法律用語)
i-六法用語


最高裁判所昭和35年7月19日判決・最高裁判所民事判例集14・9・1779

S35.07.19 第三小法廷・判決 昭和33(オ)502 土地建物所有権移転登記等請求


判示事項:
  一 減殺請求後の転得者に対する減殺請求の許否。

二 転得者に対する減殺請求権の消滅時効の起算点。

要旨:
  一 受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。

二 受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。

参照法条:
  民法1040条,民法1042条

内容:
 件名  土地建物所有権移転登記等請求 (最高裁判所 昭和33(オ)502 第三小法廷・判決 棄却)
 原審  仙台高等裁判所


主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         
理    由

 上告代理人菅原勇の上告理由第一点について。
 所論の実質は原審の適法な証拠判断の非難にすぎず、上告適法の理由と認められない。
 同第二点について。
 しかし、被上告人Aが上告人らの登記の欠缺を主張し得る第三者に該当することは当裁判所の判例の趣旨に照らして明らかである(昭和三三年一〇月一四日第 三小法廷判決、民集一二巻三一一一頁)。そして原判決は、亡B名義に所有権移転登記がなされた時においてBは本件不動産につき完全な所有権を取得し、上告 人らは何らの権利をも有しなくなつたとし、被上告人C及びDが登記義務を承継したとしても、同人らから本件不動産を買受けた被上告人Aにおいて所有権移転 登記を得た以上、特段の事情のない限り登記義務は履行不能に帰したと判示して、上告人らの請求を排斥しているのであり、その判断は正当であるから、論旨は 理由がないことに帰する。
 同第三点について。
 所論は原審の適法な証拠判断の非難にすぎず、上告適法の理由と認められない。
 同第四点について。
 しかし上告人らの減殺請求により本件不動産が全部上告人らの所有に帰したとする所論の立場に立つてみても、未登記の上告人らは被上告人C、及びDから本 件不動産を買受け所有権移転登記を経た被上告人Aに対し、所有権取得をもつて対抗し得ないのであるから、所論は原判決の結論に影響のないものであり、採用 に値しない。
 同第五点、第六点について。
 亡Bに対する減殺請求後、本件不動産を買受けた被上告人Aに対し減殺請求をなし得ないとした原審の判断、並びに時効の起算点に関する原審の判断は、いづれも正当であり、その間に齟齬はないから、論旨はすべて理由がない。
 上告代理人加藤行吉、同工藤祐正の上告理由第一点について。
 所論は原判決に即せず、第一審判決の違法をいうもので、上告適法の理由と認められない。
 同第二点について。
 所論の理由のないことは前記菅原代理人の上告理由第二点の説示により諒解すべきである。
 同第三点について。
 上告人らが贈与を受けたにしてもその所有権の取得をもつて対抗できないものである以上、所論の事実を必ずしも確定する必要はないから、原判決に所論の違法あるものとは言えない。
 同第四点について。
 遺留分に反する譲渡行為であつてもそのため当然無効となるものではなく減殺請求に服するにすぎない。そして本件は被相続人Eの生前の二重贈与と減殺請求 の事実に関するもので、単なる相続人間の相続財産の所有権取得の主張の問題ではないから、所論のような理由によつて原判決の判断を違法と解することはでき ない。引用判例は適切でなく、論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、九三条一項、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一